足りないことが成長の源

マイナスアルファという考え方があります。

分かりやすい事例でよく使われるのが切り株の話。切り株を除去したい場合に有能な微生物のようなものを開発して切り株を分解させようと試みてもうまくいかないことが多いらしい。切り株の炭素が美味くないからという理由もあるし、微生物にとって必要でないのかもしれない。マイナスアルファの考え方では微生物にとって切り株の炭素を欲するような環境に置く。他の養分は十分に与えるが、生存に必要な炭素は欠乏させた環境を作る。すると美味しくなくたって炭素を摂取しなければならなくなる。その結果切り株はみるみる分解されていって除去できるというわけです。

物も情報も溢れかえっている現代において、このマイナスアルファの考え方は貴重なのではないでしょうか。スポーツの世界でも同じことが言えます。コーチ、トレーナー、トレーニングコーチ、栄養士、メンタルコーチなどの人材資源も与え、最新の道具、人工芝など整えられたグラウンドやフローリングそのものもそうだが、それを無制限に使える環境。良かれと思ってあれもこれも環境を整えると選手は頑張らなくなります。これらはプラスアルファの考え方です。

マイナスアルファの考え方では、ハングリー精神を刺激するとも言えることかもしれませんが、さまざまな制限をかけた状態をあえて好材料として捉え、独創性や努力を引き出すことができることでしょう。頑張らなければならない環境を設定するということ。時間的制約、物質的制約、人材的制約、足りないものは自分の努力や工夫でなんとかしていこうという試みです(話せば長くなるので別の機会に譲るがこの中でも時間的制約によって”もっとやりたい”と思わせることは結構大事)。また、意図的でない事例として、都市部や先進国に対して地方や途上国の環境においては、得てして特異な選手が排出されることがあります。

事実確認はしていないのですが、ブラジルでは多くの施設を平らな人工芝に整備した結果、サッカーが弱くなったという話を聞いたことがあります。アメリカのメジャーリーグとマイナーリーグの違いも似た事例かもしれません。トッププロスペクトと言えども同じ環境をくぐらせます。

特にジュニアやアマチュアの指導をされている場合にはこのマイナスアルファの考え方を持っておいてほしいと思います。親や指導者も驚くほどに子どもというのは適応していくものです。無きゃ無いで、ある環境を大切にしていくものです。社会においてもすべて条件が整うなんてことは稀有ですし、整った状態で成功を勝ち得てもあまり面白くないのではないでしょうか。

“足す”のではなく“引く”

発想は難しいかもしれませんが、実行はしやすいはずです。
効果をお楽しみあれ。



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