時間、空間、チカラを調整する

元陸上選手の為末大さんが毎週発信している「私のパフォーマンス理論」。
その36回目の投稿で「乗り込みについて」が書かれていました。

頭の中では理解しているように感じていたものの、「乗り込み」という表現を用いながら体験談を元に文字でアウトプットされた文章はとても読みやすく、腑に落ちるものでした。自身の体験や考えを文字におこすという作業ができる元アスリートは少ない様に感じます。自分の行なっていた競技に発展性をもたせるべく、そういった経験や思考を後世に伝える手段としてそれ(文字おこし)ができるということはとても有意義なことであり、もっと多くのアスリートに行なってほしいと思います。

それはさておき、「乗り込み」について書かれた文章の中で、特に目に留まったのは以下の部分です。

“慣れてくるとこの乗り込む時に、長く深く乗り込むのか、短く浅く乗り込むのか、膝角度を深くするのか浅くするのか選べるようになる。”
(原文ママ)

輝かしい実績を残された元アスリートに対して私がこのように述べるのはある種失礼に値するかもしれませんが、この“長く深く、短く浅く”の感覚を持ち、そしてそれを運用できていたということが、アスリートとして一定の成果を出せた一つの要因だったのではないかと思います。(無礼を承知で言及すれば膝角度に加えて股関節も同じように調整できるとより良いと個人的には思っています)

以前より私はこの場で身体運動の原則として“適切な方向に、適切なタイミングで、適切な力を発揮すること”と述べていますが、この“長く深く、短く浅く”というのは、時間、空間、チカラの三要素を含んでおり、とても繊細で重要な感覚だと思います。

適切なタイミングで筋の緊張を適切に高めておき、関節角度(骨の配置)を適切に整え、来たるべきが来たら必要な分量だけのチカラを発揮する。ほとんどの競技における練習はこの精度を高めることに尽きるのではないかと思います(生理学的な変化を狙った体力トレーニングは除く)。

先に述べた時間、空間、チカラの3要素を共感しながら精度を高めていく作業が指導者には求められます。「ぐぅぅぅぅ~~~、、ポンっ!」とか、「バッ、バッ、バッ」などといったオノマトペは有効な手段の一つですね。

為末さんのようにはいかず、話が抽象的で分かりづらい文章となってしまいましたが、冒頭に述べたように元アスリートが「乗り込み」の重要性と感覚、そしてその運用方法について言及し、文字におこされていたことが運動を指導する立場の私にとってはとても嬉しく思い、この場を借りてシェアさせていただきました。


コメント

このブログの人気の投稿

摩擦の不思議と地面反力を考える

誰のためなのその指導?

スポーツやアスリートの存在意義や存在価値