トレーニングの目的と結果としての体重増加について

久しぶりの投稿になります。大谷選手がトレーニングとパフォーマンスに関しての意見を述べていたのでそれに関して書きたいと思います。体重増の狙い、憧れの選手は…日本ハム大谷に「15の質問」

これまでにも彼なりに考えはメディアに対しての発言していたことと思いますが、メディアのクオリティの問題なのか、あまりきちんと世に伝わっていないと感じていました。そんな中で今回のインタビュー記事はだいぶ彼の考えがストレートに表現された稀な記事だと思います。そして誤解を恐れずに言えばそれが日刊ゲンダイということが驚きです。

本題に入る前にもう一つ、国立スポーツ科学センタートレーニング指導員の河森氏がこの記事に関してブログを書いておられたので併せて紹介いたします(「♯322現役アスリートに参考にしてもらいたい、トレーニングに対するプロ野球日本ハム大谷選手の考え方」)。意見としてとても賛同させていただきたい投稿で、知識量、トレーニング指導者としての実力、思慮深さ、表現力などあらゆる面で、同氏の記事よりもうまく書ける気がしないので、大谷選手のインタビュー記事に関しての意見は河森氏に倣うまでとさせていただきたいと思います。




私がここで述べたいのは、近年体重増加至上主義が選手においてもメディアにおいても偏重され過ぎているということです。アメフトやラグビー、相撲の様に、体の質量そのものがある一定量必要なケースはありますが、野球の場合はそうではありません。体重が増えるというのはある目的のためにある行為を行った結果であるということです。今回の大谷選手で言えば、本人が手に入れたいパフォーマンスというものがあって、それを得るために揃えなければならない条件の一つが力であり、手段としてウエイトトレーニングを選択したということになると思います。これまでもそうだと思いますが、増量そのものや100㎏を目標に置いてやってきてはいないはずです。

それで、彼の例に留まらず、ウエイトトレーニングをアスリートが取り入れる際にはやはり手に入れたいのは『力』になります。ここで注意したいのが「筋力」でなく、結果として何か物体に与える「力」です。筋力が上がっても力そのものが上がっていないケースは前述においての目標に対しては失敗となります。力を手に入れる目的はそれぞれ異なるとは思います。前述の大谷選手で言えば自分のパフォーマンスを上げるために必要なものが力であったのでしょう。彼が目指した(あるいは数年計画で目指している=現在進行)パフォーマンスはシーズンでの活躍を待ちたいと思います。そういえばダルビッシュ選手も数年計画でトレーニングとそれに伴うパフォーマンスを自分で計算していました。

ここまでを理解できると、例えば1.ボールを遠くへ飛ばしたい→2.力が必要(技術を伴った上で)→3.力を養うトレーニングをする(いろいろな変化に伴う技術練習を並行して行う)→4.エネルギー、たんぱく質が必要→5.食事を多く取る→6.結果として体重が増える

ということになると思います。残念なことにこのようなプロセスを経ずにただ数値だけを追っている選手(アスリートとは呼べない)が多いです。目的が完全に体重増加になっているケースですね。目的はあくまでもパフォーマンスアップであって、体重を増やすことではないはずです。メディアもまた数値に踊らされすぎです(←本当に踊らされているのは読者)。加えて言うと、そういう選手は短期間になんとかしようとしすぎです。1回のシーズンオフで10㎏とかはナンセンスですね。まず10㎏分の筋肉量なんてそもそも簡単に増やせるものではないですし、10㎏分増加した体を扱っていくための技術が伴ってない場合が多いです。そういえば大谷選手も増量分がすべて筋肉だとは思わないとコメントしてましたね。そういえば昨シーズントリプルスリーを達成し史上初の本塁打王と盗塁王を取った選手は増量のためにチーズバーガーを多量に食した時期があったような、、、。

ところで、この一つ前のパラグラフの内容にも触れるのですが、ウエイトトレーニングは既述の通り力を養うトレーニングであって、筋力そのものをトレーニングするものではないです。私の以前の記事「ウエイトトレーニングをしっかりと考える」にも書きましたが、ウエイトトレーニングは力の出し入れの調整能力であったり、肢位のポジションだったり、動きの再現性だったり、そういったことを訓練するための、いわばコオーディネーショントレーニングと言えると思います。大きな力を発揮するのもコオーディネーション能力の一つです。

彼の今シーズンのパフォーマンスを純粋に楽しみにしたいと思います。結果が出なかったら体重の増加の是非をまたメディアが再加熱しかねないですが、みなさんも本質を見てスポーツを観戦しましょう。

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